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裁判の仕組みと責任の認定基準
裁判の仕組み

日本の裁判は民事刑事行政訴訟に大別されます。

項目1民事

 実務上もっとも問題となりやすいのが民事の世界です。ここでは、利用者・事業者間で生じる事故をはじめとするトラブルについて主に解説します。まず、事故等で「被害」を受けた利用者が事業者に責任を追及するには、下記二通りの方法があります。

「被害視野」には、1契約責任(民法415条)と2不法行為責任(民法709条)の2通りの責任追及方法がある。

 【1】の契約責任は、サービスの利用契約を結んだ当事者間でしか生じないものであるため、事業者だけが追及されるものです。一方②の不法行為責任は、赤の他人同士でも交通事故等で加害者・被害者の関係になるように、それまでの関係に拘わらず誰もが責任追及される可能性があります。そのため、介護裁判事例の転倒例18の ように、現場の一ヘルパーやケアマネまでもが、単独で裁判の当事者(被告)となってしまうこともあるのです。

損害賠償請求の仕組み。債務不履行責任(民法415条)、使用者責任(民法715条)、不法行為責任(民法709条)

 なお図中、「民法715」とあるのは不法行為責任を負う者の雇用主としての責任規定であり、使用者責任といいます。
実際に裁判において、このようにヘルパー個人が「狙い撃ち」され責任を追及されることは滅多にないのですが、虐待まがいの事故や余程落ち度がある等、利用者側で納得がいかない様な場合には、法人と並んで連帯責任を追及されることもあり得るところです。もっともその場合には、大抵法人が依頼する弁護士が併せてそのヘルパーの代理人も務め、仮にヘルパー個人の責任が確定したとしても法人がこれを肩代わりすることが多いといえるでしょう。

 事業者側の立場の方は「それにしても何故、利用者側はわざわざ弱い立場にある現場職員を狙い撃ちにするのだろう…?」意地悪ではないか、という素朴な疑問を持たれるかもしれません。訴える側の心理としては「どうしてもそのヘルパー個人が許せないから」、ということもあり得ますが、理由の一つには「その現場ヘルパーに会わせてもらえないから」(名指しで訴えなければ、直接コンタクトすることが出来なかった)という場合もしばしばあります。「そんな些細な理由で…」と驚かれるかもしれませんが、介護裁判というものはそれほどまでに感情がこじれた挙句の事態であり、一度事業者やヘルパーを「許せない」と断じた利用者(家族)は、「どんな手を使ってでも真実を明らかにしたい」、「酷い仕打ちをした事業者にペナルティを与えたい」と躍起になってしまうものなのです。

項目1刑事

 介護の世界で起こり得る刑事事件の刑罰規定としては、以下が例として挙げられます。

  1. 転倒・誤嚥等の事故

    業務上過失致死傷罪
  2. ヘルパーによる窃盗、物盗られ妄想関係

    窃盗罪 業務上横領罪
  3. 送迎時の交通事故

    自働車運転過失致死傷罪 危険運転致死傷罪
  4. 入退去時のトラブル(「無理やり追い出された」等)

    保護責任者遺棄罪 保護責任者不保護罪
  5. 虐待等

    暴行罪 傷害罪 傷害致死罪 名誉棄損罪 侮辱罪 脅迫罪 
    強要罪 強制わいせつ罪、強姦罪(性的虐待) 等

 ニュースなどでも度々虐待事件で逮捕、といった報道がなされますが、実務上「刑事沙汰」になることは滅多にないといえるでしょう。介護事故が起きて、利用者のご家族が立腹のあまり「警察に届ける」ということがありますが、現場で目を離した隙に転倒、といった事例で警察が職員の逮捕等に向けて本格的に捜査する様なことはまずありません(電話や任意出頭で事情を聴くという程度はあるかもしれませんが)。
 日本の警察機関は常に忙しく(本当かどうか?はさておき)、また一度事件として受理すると徹底して捜査し結論を出さなければならない責任が生じるため、非常に慎重であるといえます。
 余程のことがなければ一般市民の訴えを聞き届けてはくれないため、逆に被害者側からすれば、加害者に対し本気で処罰を求めるのであれば最低限告訴状と事実関係を時系列で整理した書面、証拠写真等の書類を整理して持参することが必要です。警察といえど人の子ですから、忙しい刑事さんの手助けに少しでもなる様サービスする、という献身的な姿勢と、あまり粘らず時間をかけないことが重要です。
 なお、警察に対する被害者からのアプローチには「告訴」と「被害届」の二種類があります。前者は正式な起訴、刑事裁判を求める意思表示ですが、後者は単なる被害実態の申告に過ぎません。「とりあえず被害届を出してもらって様子をみましょう」等と言われたら、適当にあしらわれている可能性が無きにしも非ずですので、「正式に告訴します」とはっきり伝える必要があります。
 もっとも、日本の刑事システムは検察官が最終的に被疑者を起訴するか否かを決める専権がありますので、被害者が告訴さえすれば100パーセント刑事裁判になる、というものではないので注意が必要です。

項目1行政訴訟(行政事件訴訟)

 国や都道府県、市区町村を相手取り行政手続の無効や損害賠償を主張する裁判です。介護事業者は保険者である行政に心臓を握られているようなもの(?)ですから「お上に逆らうなんてとんでもない!」と思う方もいるかもしれませんが、意外にも介護保険関連での行政訴訟はこれまで何件も提訴されています。
 その類型としては、【1】事業者の指定取消しを争う場合と、【2】介護報酬の返還義務を争う場合が代表的です。
 こうした行政相手の訴訟は、事業者にとっては残念ですが殆どが負けという結果になっています。刑事でも同じ傾向がありますが、国をはじめとする公的システム、既存勢力は滅多なことがなければ負けない、改めないと思う位がちょうど良いでしょう。基本的に裁判所というところは保守的・前例踏襲主義なのです。
 行政処分が覆された数少ない事例として、デイケア(通リハ)の指定取消し処分が裁判所により取り消された平成25年4月26日名古屋高等裁判所判決(平成24年(行コ)第42号)をご紹介しましょう。
 三重県は、医療法人Aが運営する通所リハビリテーション事業所が、「架空の介護サービスを提供したと偽り介護報酬を不正請求した」として2010年9月21日付で指定を5年間取り消しました。取消しの理由が不明瞭であったことを不服として法人Aは津地裁に提訴しましたたが、一審は「通知書に記載がなくても、処分理由の基礎となる事実関係は十分に伝達されている」として請求を退けました。法人Aが更に名古屋高等裁判所で争ったところ、同高裁n裁判長は、「県は処分原因となった具体的な事実を特定して示す必要があるのに、処分通知書には不正請求とされた請求の対象者や期間、サービス提供回数、請求金額などが何ら特定されていない」と指摘。行政手続法が求める理由提示としては不十分で、違法であると結論づけました。

 重要なことは、保険者の言う(やる)ことだから「間違いは無い、逆らってはいけない」等と思考停止しないことです。保険者も被保険者も、事業所も当然ルールに則り日々の業務をこなしているのであり、そのルールは表面上は保険者の出す通達や口頭・書面での指導かもしれませんが、その下には行政手続法をはじめとする複数の法律があるのです。実地指導や監査で「おかしい」と思ったら、一度はそのロジックを疑い検証してみることが必要でしょう。

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