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転倒事例の個別検討

事例番号は前出の表に対応しています。

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事例15

  • 神戸地方裁判所伊丹支部判決/平成20年(ワ)第543号
  • 平成21年12月17日
  • 請求額544万7815円/うち376万7810円を認容。
  • グループホームでの二度の転倒による骨折事案

事例12と同様、居室内で見守りをしていない間に転倒というケースです。事故態様としてはごくありふれたものであるだけに、この裁判例も施設にとっては大変な脅威であるといえるでしょう。

(1)利用者の状態

  87歳 要介護度2 平成11年より脳血管性認知症
 物盗られ妄想や、徘徊で警察に保護されることが多くなり、平成16年1月、被告施設に入所した。この段階では、認知の状態は中程度、声かけ、見守りにて日常生活はほぼ自立しており、要介護度は1であった。
 Aは、2階に居室を持っており、居室内には、ベッドとタンス、テレビが置かれていた。(乙9)
 Aは、第1事故に遭うまでは、自力歩行ができており、生活も比較的自立していたが、窓や扉の戸締まりを気にし、夕食後は、必ずといってよいほど玄関の戸締まりを確認し、また起床後はカーテンを自分で開けるなどの習慣があった。Aの性格や習慣等については、被告職員も認識していた。

(2)事故態様

  Aは、平成18年4月15日、居室内で、ベッドから落下する事故に遭い、第1腰椎体圧迫骨折、骨粗鬆症と診断された。この際には、Aの成年後見人は、被告に対し、Aは骨が弱いので気をつけて欲しい旨要望したが、被告が具体的な対策をとった形跡は窺えない。
  第1事故
 Aは、平成18年7月20日午前6時30分ころ、居室内で起床直後に、窓のカーテンを開ける際にふらつき転倒した。転倒の際には、被告職員の見守りはなく、「どすん」という音がしたため、被告職員が居室を訪問し、ベッドと窓の間の床の上に右側位の状態で倒れ込んでいるAを発見した。Aは病院に緊急搬送され、右大腿骨転子部骨折と診断され、103日間入院した。その間手術を受け、術後1週間後より歩行訓練を開始し、介助下で歩行可能となった。
  第2事故
 Aは、前記退院日に、本件施設に戻ることになった。被告は、被告職員による就寝後のこまめな巡視を実施したり、居室内のタンスの配置換えにより転倒を防止する配慮をした。
 しかしながらAは、平成18年11月7日午後7時ころ就寝し、同10分ころから同30分ころまでの間に、居室の窓のカーテンの開閉の際に転倒した。転倒の際には、被告職員の見守りはなく、同10分ころに、被告職員が巡視した際には異常がなく、同30分ころに、巡視した際に、原告居室窓際で、体をくの字で右側臥位の状態で床に倒れているAを発見した。

(3)事故後の経緯

Aは病院に緊急搬送され、右側座骨骨折と診断され、同病院に100日間入院した。
 Aは上記退院後、被告の運営する施設とは別の施設に入所及び転所したが、第1、第2各事故による負傷及び入院生活があったために、自力で立ち、歩行することが困難となり、要介護状態区分も3に変更された。

(4)判決文ハイライト

「Aは認知症に罹患していたところ、第1事故前にも本件施設内でベッドから落下する事故に遭っており、その後、被告はAの成年後見人から具体的な危険性を指摘した要望を受けていたにもかかわらず、事故発生及び損害拡大の各防止のために、何らかの対策をとった形跡がない。また、第1事故後も、被告は、Aの就寝後にこまめな巡視を実施したり、居室内のタンスの配置換えによりAの転倒を防止する配慮をしていたなどある程度の対策をとっていたものの、それ以上の対策、例えば、被告職員が把握していたカーテンの開閉などのAの習慣的な行動は、被告職員の巡視や見守りの際にさせたり、Aが1人で歩く際には杖などの補助器具を与えるなどの対策をとったり、そうした対策を検討していた形跡はないし、そもそも入院103日が必要な第1事故後に、Aが退所せずに、本件施設に戻ったのであるから、本件契約書第5条2項の痴呆対応型共同生活介護計画の変更を、少なくとも検討する必要が全くなかったとはいいがたい。
 したがって、被告が、第1、第2各事故について、無過失であるとは到底いえないので、本件契約書第19条1項本文の文言(不可抗力による免責規定)によって免責されることはないというべきである。

(5)認定損害額の主な内訳

 第1事故について
 治療費21万円 入院雑費15万円 慰謝料120万円
 第2事故について
 治療費55万円 入院雑費15万円 慰謝料150万円

(6)外岡コメント

 実務においては何度も転倒した挙句施設を退去、というパターンは大変多くみられるところ、実際に提訴される場合過去数年(契約責任を問う場合10年)に遡ってその全ての事故につき責任が問われる可能性がある、という、施設側にとって大変脅威となる事例であるといえるでしょう。

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