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実際にあった介護裁判事例
転倒事例の個別検討

事例番号は前出の表に対応しています。

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事例21

  • 青森地方裁判所弘前支部判決/平成23年(ワ)第97号
  • 平成24年12月5日
  • 請求額1478万7050円/うち832万4698円を認容。
  • デイサービスの利用者が入浴時に転倒・骨折した事案

 入浴時に職員が二人の利用者を同時にみていたところ、一方から目を離した隙に転倒したという事案です。入浴は滑りやすく、また冬場は寒暖差による体調の急変など様々なアクシデントが想定されるところですが、これも不思議なことに入浴時の転倒というカテゴリではまだ先例が本件以外には無いようです。死亡事案でないことに鑑みれば、比較的高額の賠償額が認定されています。

(1)利用者の状態

 89歳 要介護度3
平成20年1月ころ、右大腿骨転子部を骨折し手術を受けて以降、日常生活における歩行が困難となる。平成21年になると、Aの下肢機能は相当程度回復し、自立歩行は困難であるものの、立ち上がりが上手くなったり、簡易トイレへの移動介助が楽になるなどし、これを被告担当者も認識していた。

(2)事故態様

平成21年3月31日、Aは、他の利用者4名(いずれも自立歩行可能)とともに被告の入浴介護サービスを利用した。その際の介護担当者は2名であり、Aの担当者はBであった。
Aは、脱衣後、パートナーと呼ばれる入浴補助用簡易車椅子に移乗し、浴場に入場した。
パートナー椅子とは、キャスター付き(ストッパーあり)のパイプ椅子であり、座部及び背部にネットが張られていて、座ったまま浴場内を移動したり、シャワーを浴びることができるものである。また、脚部と座椅子部分とが分離可能になっており、利用者を座らせたまま座椅子部分のみを4本のベルトで吊り下げて浴槽に入れることができる。パートナー椅子にはこのほかにベルトが2本着いているが、これは浴槽に入った際の身体の浮き上がり防止のためのものであり、利用者を椅子に固定するだけの拘束性はない。また、浴槽外では、座椅子部分を脚部の上に乗せて使用するが、両者を接合・固定させる器具はないので、座っている利用者は必ずしも安定した状態ではない。
浴場に入場後、BはAの洗身を介助し、Aも手の届くところは自ら洗身した。BはAのほかに利用者1名を担当しており、他方、もう1名の介護担当者は、残り3名の利用者を浴槽に入らせて、湯温調整などを行っていた。
そのころ、Bの担当するもう1名の利用者が、背中の洗身介助を依頼したことから、Bは、Aに対し、先に同利用者の洗身介助をするので待っているようにAに告げた。これに対しAが頷いたことから、Bはパートナー椅子を同利用者のすぐ側に移動させ、Aの様子をうかがいながら同利用者の洗身を介助していたが、やにわにAが前屈みになってパートナー椅子ごと体勢を崩した。Bは気が付いて手を伸ばしたが間に合わず、Aは右半身を下にして床面に転倒した。

(3)事故後の経緯

 同日レントゲン撮影するも骨折を認めることはできずいったん帰宅した。しかし、翌4月1日になって痛みが増強したため、再度受診したところ、左大腿骨転子部に骨折が判明した。Aの傷害は、平成21年8月4日に症状固定した。

(4)判決文ハイライト

「担当者としては、日常的な自立歩行は困難であるものの、ある程度の挙動傾向のみられる対象者については、より転倒の危険が高いといえるのであるから、自立歩行可能な対象者に比べて更に高度の注意を払う必要があり、具体的には、対象者から目を離さないようにするとか、一時的に目を離す場合には、代わりの者に見守りを依頼したり、ひとまず対象者を転倒のおそれのない状態にすることを最優先とするなどの措置を取る義務があったというべきである。
 しかしながら、Aの入浴介助を担当していたBは、Aを自らの側に移動させてその様子をうかがってはいたものの、Aを不安定なパートナー椅子に座らせたままの状態で、他の担当者に見守りを依頼することもせず(人数的に困難であったと認められるが、そのことをもって被告の注意義務が軽減されることにはならない。)、一時的にAから目を離して別の利用者の洗身を手伝っていたというのであるから、結局、被告が上記義務に違反したことは明らかというほかはない。」

(5)認定損害額の主な内訳

 治療費15万円 将来の介護費用258万円 入通院慰謝料180万円
 後遺症慰謝料290万円 弁護士費用 75万円

(6)外岡コメント

事例1の、送迎時の転倒と態様が似ていますが、「人数的に困難であったと認められるが、そのことをもって被告の注意義務が軽減されることにはならない。」との判示部分から、現場における安全配慮義務は10年前と変わらないか、むしろ厳しく認定される傾向にあるといえます。介護保険法所定の人員配置基準を満たしていても、いざ事故が起きれば「足りない」と認定されてしまうのです。

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