後見人から身体拘束に関して苦情
有料老人ホームの施設長です。先日突然、あるご利用者の後見人を名乗る司法書士から連絡があり、違法な身体拘束がなされている可能性があるので、利用者に関するケアプランや身体拘束に関する書類を全て提出してほしいとのことでした。
今回問題となっている身体拘束とは、ベッドからの転落防止のためにベッド柵を閉じるということと、鼻腔経管栄養のチューブを抜いてしまわない様、ベッドにおられる間両手にミトンを付けさせて頂くというものでした。我が施設としては、ご家族と何度も時間をかけて相談した上で身元引受人としてご長男に承諾のサインを頂き、モニタリングをしながら必要最低限にとどまる様注意しながらやってきました。
当施設のやり方に問題があったとは思えませんが、その後見人は「家庭裁判所にも提出する」等と言っています。ご長男の話では、後見人とうまくいっていないとの話を以前聞いたことがあります。どの様に対応すればよいでしょうか。
介護現場での身体拘束については「切迫性、非代替性、一時性」の三要件を満たす場合に例外的に許されるとする基準があります(厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」平成13年)が、ある拘束ケースが違法と評価されるか否かは実際にはケースバイケースであり、紙一重である場合もあるといえます。そのような中で大切な要素は「ご家族と十分協議し、代替措置が考えられないか模索する」ことといえますが、本件でもご家族と話し合いサインも頂いているので、基本的には当該身体拘束自体に問題はないものと考えます。
しかし問題は、実際に後見人の方が異議を唱えてきたことであり、施設から見て窓口が一本化していない点です。後見人が家族とは別に就任した場合、理屈上はその者が法定代理人となるため、施設利用契約等も全て後見人名義で締結し直すこととなります。それをしないまま今日まで来てしまった結果、ご家族と後見人のどちらが責任をもってご利用者のことを決定するかが不明瞭になってしまったものと見受けられます。
ついては、後見人に対しては「家庭裁判所に提出するのは構わないが、ご家族と協議を重ねた上での身体拘束に関する決定を、後になって別の立場の人から違法といわれても困る。施設との関係では、窓口を一本化してほしい。今回の件についても、ご家族と話をしたことはあるのか。」と問いかけると良いでしょう。おそらく家族とは全く連携していないはずですから、「それは後見人の業務として不十分ではないか」と追及することができます。
このように外部の専門家による後見人と家族が仲が悪いというパターンはしばしば見受けられますが、何にせよ施設にとっては迷惑な話ですね。