訪問介護ステーションを運営しています。昨日弁護士から電話があり、うちの事務員が大麻所持罪で逮捕されたとの連絡がありました。その先生は事務員の国選弁護人であるとのことです。
弁護人の先生はこれから事務員と面談するため留置されている警察に行くと言っておられましたが、われわれ法人としては今後どのような対応をすべきでしょうか。他の職員も動揺しているので、今まで通り働いてもらうことはできず、普段の素行も悪かったので懲戒解雇としたいのですが…
こちらの対応次第で、警察が事務所の手入れにやってくる様なことはあり得るのか、初めてのことなので心配です。
まず、本容疑が組織的な犯罪であり法人も深く関わっている様な疑いが濃厚でない限り、会社の事務所を警察が捜査するようなことはまず無いと言ってよいでしょう。その点はご安心頂きたいのですが、その事務員の雇用主としての処遇は可及的速やかに決し動いていく必要があります。
まず国選弁護人に家族や関係者との接見(面会)禁止が付いていないかを尋ね、接見出来る様であれば本人に直接会いに行きます。禁止の場合は、弁護士づてに「今回の罪を認めるのか」を確かめてもらう必要があります。更に、解雇も止むを得ないと考えているか、本人の意思を確認しましょう。
本人に確認することはもう一つあり、逮捕・勾留は数十日に及ぶところ、この期間に有給休暇を充てることを希望するかを尋ねます。有給申請は権利であるため、これを拒むことはできません。期間が切れた場合は、法人として欠勤扱いとするのか、休職を命じるのかを決めておく必要があります。
次に懲戒解雇処分ですが、就業規則には、おそらく解雇事由として「会社の内外において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき」等という規定があるでしょうから、それに該当するとして処分を下すことも可能と考えます。もっとも、原則論としては従業員がプライベートで犯罪を犯せば問答無用で懲戒解雇できる、というものではなく、そういった出来事は飽くまで私的な出来事であり、本業である勤務内容に何かしらの影響が及ぶと認められる必要があります。本件ではまず問題ないものと思われますが、いずれにせよ本人がどう思っているかが重要です。
本人が認めており観念している様であれば(但し時の流れとともに本人の認識や希望等が変化していく可能性もあるため、あまり性急に終局判断を下さない方が無難でしょう)、労働基準監督署に問い合わせ懲戒解雇の場合の解雇予告手当除外処分の認定申請をします。これを事前に行わないと、懲戒解雇といえど原則として1か月分の予告手当を支給する必要がありますので注意が必要です。その他、社有物の返還や保険関連の手続き等、事務手続きが多数発生しますので平行して注意を払い進めていく必要があります。
なお、懲戒解雇の要件が「有罪判決を受けたとき」となっている場合は、判決が下りるまで処遇を待たなければなりません。これでは企業秩序を維持できませんから、柔軟に対処できる様この機会に就業規則を見直されると良いでしょう。