特養のユニットリーダーです。コロナが直接の原因ではないのですが、痛ましい事故が起きてしまいました。
あるご入所者様が、夜間、3階の居室のベランダから飛び降り自殺されました。うつ病の方でしたが連日のコロナ報道でますます暗くなっていき、家族とも面会できない…ということで追い詰められてしまっていたのだろうと思います。
他のご入居者様も、私を含め他の職員も皆不安と恐怖の中で鬱々と過ごしています。
ご相談したいことは、近時の感染拡大防止策の一環として、換気のため居室のベランダの掃き出し窓を開けていたことです。これは、いわゆる施設側の過失に当たるのでしょうか。
普段は、窓の足元部分に市販のロックを取り付け、開かないようにしていました。もっともこれも、何度か窓枠を左右に揺すると外れてしまうのですが…
そして換気は、日中に行うこととし、就寝前には窓を閉めロックするようにしていました。ところが当日、担当職員が窓を閉め忘れていたのです。この点が過失とされ、施設に死亡の責任が問われることにならないか心配です。
それは辛い事件でしたね。難しいところですが、結論としては「窓を閉め忘れていた」ということだけで即賠償義務ということにはならない可能性が高いものと思料します。
事件・事故について責任があるか否かは、その態様での事故が「具体的に予見できたか否か」で判断されます。
本件では、例えばご入所者にベランダの柵を乗り越える十分な体力と身体機能があり、実際に乗り越えようとしたヒヤリハットがあるといった経緯があれば、飛び降りるという結果が具体的に予想できたといえます。
そうなると室外に出ること自体が危険に直結することになり、「窓を開けていたこと自体が過失であった」と評価されやすくなるでしょう。
一方で、このご入所者は窓が開いている日中でもベランダに出るということは無く、飛び降りようとする動きや帰宅願望、自殺願望を窺わせる発言等も日頃無かったということであれば、本件のような事件は事前に予見できなかったといえる可能性が高まります。
このように、ある事故に関する責任の有無は飽くまで種々の事情を総合して個別具体的に判断しますので、一律に「窓を閉め忘れたからアウト」ということにはなりません。
なお、本件については自殺と決まった訳ではなく、帰宅願望の故に離設しようとした結果かもしれません。
いずれにせよこういう場合は後に警察の捜査が入りますので、窓枠やベランダの手すり等は指紋採取できるよう、職員は触らないようにしてください。
また、発見時までの経緯を詳しく聞かれることになりますので、できるだけ詳細まで(特にご本人との会話)思い出し別途記録を作成しておきましょう。
本件から得られる教訓としては、施設に密閉されいつ感染するか分からないという極度のストレスの下、自殺や離設に思いが向いてしまうご利用者が増える可能性があるということ、その対策として窓の開閉にはいつも以上に注意を払い見回りをする際にダブルチェックをすべきということになるでしょう。