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リスクマネジメント・ご家族対応
タイトル リスクマネジメント 施設での転倒事故と謝罪について
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今回は、施設の転倒事故についてです。施設で事故が起きたらどうすればいいのか、実はこのお悩みが一番多いです。まずは質問を見ていきましょう。

 

質問

施設で働いています。先日、ご利用者が椅子から立ち上がった瞬間にバランスを崩し、転倒させてしまいました。介護計画では見守りが必要なご利用者でしたが、自分はその時近くにいたものの、別の方とお話をしていて間に合いませんでした。
このご利用者は今まで転倒したことがなく、申し訳ない気持ちでいっぱいですが、法律的にはどのような責任が生じるでしょうか。また、私はどうすればいいでしょうか。

 

まず正直に報告をする

こういった質問が、介護の事故・トラブルで一番典型的なものになります。
ご利用者の方はバランスを崩してすぐ転倒してしまうのですが、マンツーマンでずっと付き添うことはできないので、どうしても起こってしまいます。この時一番大事なことは、何も隠さず正直に報告をすることです。まずは何が起こったのか、ご家族にお伝えします。

もちろんご利用者の応急処置や病院への搬送も行うわけですが、事故を起こして責任を問われるのではないかと隠蔽してしまいますと、逆に大ごとになりますから、何も隠さないことが大事です。

 

次に謝罪する

その次に大事なのは謝ることです。ケースバイケースではありますが、自分が防ごうと思えば防げたかもしれないけれど、どうしようもできなかった、難しかったという微妙な場合には、やはり謝っておいた方が良いです。

 

法律面からの話

このようなケースで、不用意に謝ってしまうと責任を認めたことになり、ますます大きな問題になるのではと思われるかもしれませんが、全くその心配は要りません。
謝るだけで責任が確定することはありませんから、そこは安心して「申し訳ありませんでした」と素直に謝罪してください。

当然、「自分は悪くなかった」とお思いであれば無理に謝罪しなくても良いですが、そうでなければ素直に謝罪を伝えれば良いです。そういった謝罪のことを「道義的な謝罪」と言いますが、法的な責任とは別だと理解してください。

 

法的な責任について

法的な責任と言いますと、例えばご利用者が転倒して病院に搬送され入院または手術をしたとなると、当然費用が発生しますが、その場合“医療費”や“慰謝料”が考えられます。時にそれが何百万円となることもあり、そういった裁判例もありますが、それで怖がる必要はありません。

何故かと言うと、施設事業所ごとに保険に入っているからです。皆さんも車の運転で任意保険に入っていると思いますが、それと同じで施設で事故が起きても保険がカバーしてくれますので、ご利用者のご家族に対しては、保険会社と連携をしながら転倒事故についてどんな話をしていくか、なるべく早めに進めるのが大事になります。

 

対応を間違えるとどうなるか

謝罪や保険会社との対応をしないでいると、最悪この転倒事故が裁判にまでなったり、大きなトラブルになったりします。私はご利用者のご家族からも相談を受ける立場ですが、皆さん口々におっしゃるのが、「事故が起きたことは仕方がないにしても、その後の対応に誠意が見られない」とのことです。

具体的には「一言も謝ってくれない」とか、入院をして大変な思いをしているのに「具合はどうですか」など気にかけてくれない、もっと言えば「治療費が発生して寝たきりになったのに、介護費用などお金の話をしてくれない」と。そうなると「法律で請求してください」という相談になるのが圧倒的に多いです。

 

介護は心の交流

そこで私が通感したのは、介護は心の交流であるということです。事故が生じたことでそれが断絶したり絆が絶たれてしまうのは、非常に勿体ないと思います。そこはやはり真心を貫いてほしいです。

変な話、最後は全部保険会社が持ってくれますので、何も恐れることはありませんから、まずはご利用者とそのご家族のことを思って報告謝罪をしていただき、再発防止などいろいろできることがあると思いますが、ご利用者のために動いていただければと思います。

施設で事故が起きたとしても、怖がることなく謝罪して、ご利用者に真心を伝えていってください。