社会福祉法人の理事長です。うちのデイサービスに、ボランティアでご利用者のマージャン相手をしてもらっている人がおり、70代後半の男性なのですが、その方から何かとうるさく言われ閉口しています。
やれ「自分だけお茶菓子が出ないのはおかしい」だの「施設に通う道で事故が起きたときに保険が下りるのか」だのと追及され、横柄に振舞うのでご利用者達ともなじんでいない様子なのですが、先日「ボランティアとしてどの様な法的関係にあるのか。自分はどこまで義務を負い権利があるのか、はっきり示してほしい」と言われました。
改めて考えてみると、純粋なボランティアさんと法人はどのような関係にあるのでしょうか。ご教示ください。
ボランティアと、それを受け入れる法人とは、民法上「準委任契約」(656条)という法律関係にあります。法律行為以外の行為を、原則として無償で依頼し受諾することを準委任というのですが、委任契約の条文が準用されるため内容的には委任と同じといえます。
その最大の特徴は、無償であってもボランティアは法人やご利用者に対して「善管注意義務」(善良なる管理者としての注意義務の略)を負うということが挙げられます。これは業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のことを指しますが、一般的な注意義務より高度であり、流石に施設職員の対ご利用者責任よりは軽減されますが、ボランティアといえど責任は重いものだと理解しておいてください。
その上で、具体的に本件のようなケースでいかなる関係にあるかについては、当事者間でそれぞれにつき定める必要があります。考え方としては、飽くまで無報酬ベースであり対価を観念し得るものではないので、まず「お茶菓子が出ないのはおかしい」という主張は通り難いでしょう。もし例外的に「ボランティアさんにもお茶菓子が出ます」といった取り決めになっていれば別ですが。
施設に通う際の保険も法人側の判断であり、ボランティア保険だけで十分という場合はそこまでカバーしないということでも全く問題はありません。それが嫌であればボランティアをしなければいい、ということになります。
もっとも、「自分は何をどこまでする義務があるのか」という問いには正面から答えた方が良いでしょう。元々レクリエーション担当で入ったはずなのに、気づいたら洗濯物畳みばかりやらされていた、ということがあれば苦情になり人気が落ちてしまうかもしれません。ボランティアといえど甘く見ることなく、一人ひとり簡易な契約書を交わす様にした方が良いといえます。