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裁判の仕組み

事例番号は前出の表に対応しています。

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事例2

  • 横浜地方裁判所判決/平成10年(ワ)第1337号
  • 平成12年6月13日
  • 請求額2119万円/請求棄却。
  • 老人保健施設における誤嚥による死亡事故

老人健康保険施設の入所者が、夕食時に主にこんにゃくを誤嚥し窒息死したという事案です。こんにゃくという食材を使用すること自体、および実際のこんにゃくの大きさの適否が争われましたが、裁判所はこんにゃくの整腸作用、食材のバラエティの観点などからその妥当性を認めました。

(1)利用者の状態

 男性 76歳
 平成9年8月8日より3か月の予定で被告施設に入所。入所判定審査表には、入浴は一部介助が必要だが食事は自立、認知症は中程度、問題行動は無しと記載された。
 Aは入所後、食事は常食常菜とされたが、A本人の希望により入所初日の夕食から、全粥常菜へと変更された。その後、本件事故まで、殆どの食事について主食、副菜共に全量を食べた。
 平成9年9月20日(事故当日)午後6時の献立は、全粥、さばの香味焼き、きんぴらごぼう、きゅうりの漬物、こんにゃく田楽であった。こんにゃくは1人4切れ提供された。施設の栄養管理士は、食事をする人が老人であることを考え、こんにゃくを一般より小さく切っていた。きんぴらごぼうは、食べやすいように柔らかく煮る等により、高齢者に合うように調理していた。
 事故当時3階食堂では、Aを含め40名が食事をしていたが、一部介助が必要な者もいた。介護を行っていたのは施設職員B、C、Dであり、入所者の間を歩きながら様子を観察し、必要な介助を行っていた。

(2)事故態様

 夕食を始めて数分後、通常通り食事をしていたAが、突然声もなく座席から後ろに反り返った姿勢をとった。Bは、Aがうーと小さくうめき声をあげたので、異変に気付いた。職員らはタッピングをしながらAを車いすに座らせサービスステーションへ移動させた。Aは赤っぽい顔をして、椅子に直立して少し反り返って座っていたが、口は閉じていて声はなく、目は半開きとなっていた。そこで看護師らはAは何かの原因で窒息したと考え、口を開けようとしたがAは容易に口を開けなかった。その間看護師は午後6時3分頃、病院に連絡を入れた。介護職員らがようやくAの口を開かせ、入れ歯を取り出し、前傾姿勢にさせて背中を叩いたが、何も口からは出てこなかった。看護師は吸引器を用いたが何も出てこず、指で探ったところこんにゃく一つを取り出すことができた。Aは「あー」と一言声を発したが、それ以外には全く症状が改善されなかったため、病院に搬送した。

(3)事故後の対応

 搬送後、Aにはチアノーゼがみられ、脈が触れず、瞳孔が開いており、呼吸停止状態であった。医師が指でこんにゃく1、2個(親指の第一関節の半分程度の大きさ)を取り出し、マッサージ、気道挿管等の措置を施した結果、自発呼吸が再開し、心臓も鼓動を開始した。
 午後9時30分頃、医師は駆けつけたAの家族に対し、5から8分程度窒息状態が続いたため、来院時は死亡状態で搬送されたこと、全身状態はかろうじて保っているが脳死の可能性もあること等を説明した。9月21日午前1時21分頃、Aは心停止し死亡した。

(4)判決文ハイライト

 「Aについては、格別摂食障害があったとまでは認められない。…介護職員3名が、食堂内を巡回し、その都度必要な介護を提供していたこと、食材により、付き添って摂取させることが必要な入所者に対しては、料理を事前に取り上げておく等の措置を講じていたこと、事故発生直後、職員がただちにAの下へ駆け寄り、救急救命措置を開始していることからすると、被告施設の監視体制が、不徹底で、妥当性を欠くものであったとはいえない。その他被告の過失を認めるに足りる証拠はない。」

(5)認定損害額の主な内訳

 0円

(6)外岡コメント

事例1とは対照的に、事故前後の対応の適切性が評価され、遺族の請求は認められませんでした。両者の比較から、いかに対応の迅速性・正確性が重視されているかがよく分かります。なお本件については後日遺族側が控訴し、見舞金的解決金100万円等で和解が成立しています。

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